歯科クリニックの経営を安定させ、さらに発展していくためには、新患を増やす必要があり、「広告」を行っていくことになると思います。
逆に、何も手を打たずに放置していくと、適切な広告を行った近隣のクリニックがどんどん発展していき、患者が減る一方になってしまいます。
また、頑張って広告を行っても、費用がかさむだけで、広告効果が全く出ないということも多々あります。
費用対効果を考えると、しっかりした戦略を持って、有効な広告を適切に行っていくことが必須となります。
歯科クリニックの広告といっても、看板、チラシ、ホームページと様々ですし、どのような方に情報提供していくか、どのようにしてその方に届くようにするか、といった点でも工夫が必要です。
例えば、看板広告でも、「どこに設置するか」、「どのような大きさの看板か」、「メッセージは?」といったさまざまな内容が問題になってきます。
私も、歯科クリニックの顧問弁護士として、これまで多くの広告戦略の話をお聞きしてきました。
広告代理店と契約をしたり、具体的な広告案を考えたり・・・本当に大変です。
当事務所では、このような医療広告のサポートもさせて頂いております。
適切な広告戦略により、素晴らしいクリニックを作っていこうとチャレンジされるお手伝いをさせて頂くことは、弁護士として何よりの喜びになっています。
さて、広告媒体(看板、チラシ、ホームページ)も決定し、ターゲットも明確になり、そのターゲットに向けてのメッセージも決まってきました。
いよいよ広告を出稿します。
しかし、そこで問題になるのが、「医療広告ガイドライン」です。
「医療広告ガイドライン」という規制があり、これがとても厳しい内容になっていることは、皆様もご存じだと思います。
何故このような厳しい規制があるのか、という点はさておき、現在の状況では、この医療広告ガイドラインに適合した広告しか出すことができません。
医療広告ガイドラインの規制は多岐にわたります。
虚偽広告や誇大広告はダメというのは分かりやすいと思いますが、「品位を損なう」とか「費用の強調」はダメ、といわれても、どこからその規制に引っかかるのかは分かりにくいものです。
例えば、自費治療の広告には、「費用」を記載しないといけない、となっていますが。一方で、この「費用」を強調してはいけないとされています。
「一体どっちなんだ?」と言いたくなります。
しかも、医療広告をめぐる法規制は、どんどん進んでいます。
近年、クリニックのホームページも「医療広告」に含まれる、という大改正が行われたばかりですが、その具体的な内容も変化しています。
このような厳しい規制があるため、医療広告は、どれも同じようなものになりがちです。
ガイドライン違反と言われることを恐れて、間違いのない固い広告を出すということです。
その結果、クリニックの看板は、みんな同じ、「クリニック名」「院長の名前」「診療時間」「住所」「電話番号」のみ、ということになっています。
これは、広告代理店を通しても同様の結果となることもあります。
広告代理店の方は、広告の専門家ではありますが、医療広告ガイドラインの専門家というわけではありません。これまでの広告事例から、「これなら出せそう。」という広告を行うところも多いです。
もちろん、広告代理店には、広告戦略(看板の場所の確保やチラシの配布の仕方まで)においてさまざまな知見があり、多くのメリットがあるとは思いますので、重要な存在です。
このような状況ですので、「うちのクリニックの強みを伝えたい。」「明確なターゲットに向けて、刺さる広告を出したい。」と考えるクリニックにとっては、広告の出し方は、非常に難しいと言えます。
文字数に制約がある「看板」も問題になりますが、さらに情報量の多い「チラシ」広告や、
「ホームページ」広告になれば、ガイドラインとの抵触が飛躍的に増えてきます。
しかしながら、現在の医療広告ガイドラインの規制においても、クリニックの特色をアピールし、ターゲットに届く広告を打っていくことは、決して不可能ではありません。
ちょっとした言葉の言い換えや、対応一つで、ガイドラインに適合することもできます。
まずは、医療広告に詳しい専門家に相談することをお勧め致します。
当事務所では、さまざまな歯科クリニックの広告事例やガイドライン適合性についての交渉を担当した経験があります。
一度ご相談いただければと存じます。
弁護士法人ニューステージでは、歯科クリニックのご依頼により、医療広告(看板広告、チラシ広告、ホームページ)の適正化を行っております。
多くの歯科クリニックではホームページを開設し、患者への情報提供を行っていると思いますが、もし業者任せになっているとすれば、危険です。
平成30年以降、医療広告には大きな規制の動きがあり、ホームページもその規制対象となっていますし、規制の効果を上げるために、厚生労働省の外部委託としてネットパトロールも実施されています。
まずは、ご自身のクリニックのホームページを確認され、適法性に問題があると感じられた場合は、当事務所にご相談いただければと思います。
以下では、ホームページの自己チェックを行う上で、重要な項目をまとめておりますので、ご参考にしてください。
まずは医療広告規制の概略だけでも知っておくと良いと思います。
医療広告に関する法令、指針としては、「医療法」、「医療広告ガイドライン」、「医療広告ガイドラインQ&A」の3つがあります。
このうち、「医療法」は、もちろん医療業務の根幹となる重要な法律ですので、読んでいただいても良いのですが、はっきり申し上げると、医療法だけ読んでも、何が規制されているのか、よく分かりません。
医療法は比較的くわしく書かれた法律ではありますが、医療全般の規制を定めた法なので、「医療広告」という分野に限って言えば、どうしても大まかな記載しかなされていないのです。
最も詳細に新たな規制の内容が記載されたものは、「医療広告ガイドライン」です。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000206548.pdf
ただ、この医療広告ガイドラインは、長文な上に、内容的に難しく、分かりにくいという問題があるのです。
ざっくりでも、新たな医療広告規制を理解したいのであれば、「医療広告ガイドラインQ&A」が断然読みやすいです。
何より具体的な事例に基づいて書かれていますので、とりあえず医療広告規制を理解したいのであれば、「Q&A」が良いでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf
パラパラと「Q」を見て、気になるところだけ解説文も読む、というやり方でも構いません。
何となくでも、新しい規制の枠組みが掴めると思います。
さらに、令和3年7月には、「医療広告規制における事例解説書」が発表されました。
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/149801/zireikaisetu.pdf
これも非常に分かりやすい解説書であり、最新のものですので、規制内容が分かりやすいと思います。
医療法規制の概略を掴んだら、いよいよご自身の広告が大きな違反がないかをチェックしていきます。
チェックポイントは、次のとおりです。
チェック1
□ インターネット上のキーワード広告、スポンサー広告を行っているか。
まず、ご自身のホームページの運用として、インターネット上のキーワード広告、スポンサー広告を行っているかを確認して下さい。
運用を業者にお任せしている場合は、確認しておくとよいと思います。
キーワード広告、スポンサー広告を行っているかで、ホームページに記載してよい内容が大きく異なってきます。
これを「限定解除」といいますが、もともと、医療広告規制は、「広告の方から需要者の目に飛び込んでくる」ものを厳しく規制していた関係で、キーワード広告などを行い、検索サイトで表示されるホームページは、従来通りの厳しい広告規制の対象とし、それ以外のホームページは規制を緩和することとしたのです。
チェック2
□ ホームページに、クリニックの問い合わせ先が明記されているか。
これも「限定解除」されるかどうかのポイントです。
Q&Aでは、この「問い合わせ先の明記」として、「予約専用番号」のみの表示では足りないとされています。(「予約・問い合わせはこちら」となっていればOKです。)
クリニックの連絡先が明記されているかどうかあらためて確認して下さい。
チェック3)
□ 自由診療が記載されている場合、①通常必要とされる治療等の内容、②費用、③主なリスク、④副作用に関する事項が記載されているか。
これも「限定解除」の要件ですが、「限定解除」されるか否かにかかわらず、自由診療を記載する場合は、当該治療行為が「保険適用外の自由診療であること」「標準的な費用」の記載は、絶対に必要です。
それに加えて、上記①から④の記載がなされていることが、「限定解除」の条件になります。
上記①から④の記載が、「どの程度具体的に記載されていないといけないか。」という点も問題になりますが、これはかなり微妙な判断が要求されることになります。
もし不安があれば、当事務所にご相談いただき、専門家のホームページチェックを行っておくと良いと思います。
チェック1から3により、ご自身のホームページが、「限定解除」されるかどうかが、大まかに判断できると思います。
キーワード広告、スポンサー広告をしておらず(チェック1)、クリニックの問い合わせ先が明記され(チェック2)、自由診療に関する記載条件をしっかり記載していれば(チェック3)、「限定解除」に対象となります。
チェック4
□ 比較優良表現を使っているか。
比較優良とは、「他のクリニックと比較して優れている」ということを記載することです。
「限定解除」の有無を問わず、比較優良表現は禁止されています。
例えば、「○○の治療では日本有数」とか「県内一の○○」などです。「最高」「No.1」もアウトです。
「最先端」「最適」もアウトです。
「最新の医療機器を用いています。」のような「最新」表現については、裏付けが必要となりますが、十数年前に登場したものなどは「誇大広告」になる可能性があるので、注意です。
チェック5
□ 断定的表現を使っているか。
これも、「限定解除」の有無を問わず、「誇大広告」に該当する可能性があります。
「必ず治ります。」などの治療効果や、「痛くない。」などの治療方法について、断定的な表現がないか、チェックして下さい。
治療に関する記載は特に厳しい規制があります。
「比較的安全な手術です。」のように、少し控えめなつもりで書かれたものでも、「誇大広告」としてアウトになります。
これらの表現については、「言い換え」や「当院の目指す医療」として記載することにより、OKとなる場合もあります。
例えば、前述の「痛くない。」はアウトですが、「痛みに配慮した治療を心掛けます。」という表現ならば、クリニックの方針としてOKになる可能性があります。
断定的表現があれば、言い換えが可能かどうかも検討するとよいと思います。
チェック6
□ 費用の強調がなされていないか。
「無料相談実施中」など、費用に関する記述は多く見られますが、こうした記述を「強調」したものは「品位を損ねる内容の広告」として規制されます。
注意すべきは、「無料相談」と書かれていてもそれだけでアウトになるわけではなく、このような記述を「強調」しているかどうかが問題になるということです。
Q&Aでも、「費用について分かりやすく太字で示したり、下線を引くことは、差し支えありません。」と書かれているので、その程度の強調であれば良いですが、「費用の安さ」を前面に押し出して、患者を誘引するようなものはアウトということです。
チェック7
□ 患者の体験談が掲載されているか。
ホームページ規制の重大ポイントの1つです。
先ほどの「限定解除」を踏まえて考えるべき項目です。
「限定解除」されていないホームページでは、患者の体験談は、「広告可能事項」ではありませんので、どのようなかたちで掲載されていてもアウトです。
一方、「限定解除」の対象となるホームページでも、「治療の内容・効果」に関する体験談の掲載は、禁止されています。
「限定解除」されたホームページでは、「治療の内容・効果」に関係しない体験談であれば、掲載可能です。
チェック8
□ ビフォー・アフターが掲載されているか。
ビフォー・アフター(術前・術後の写真)は、「治療の内容・効果」に関する表示ですので、「限定解除」の対象ではないホームページでは一切掲載できません。
一方、「限定解除」の対象となるホームページでは、「①通常必要とされる治療内容」「②費用」「③主なリスク」「④副作用」について、詳細な説明を付けている場合はOKとされました。
なお、「術前」のみ、「術後」のみの写真も同様の規制を受けます。
チェック9
□ 医師の略歴に「専門」「認定」「研修」の記載がないか。
専門性や認定医については、厚生労働省が認めた学会が行うもののであれば、当該認定団体の名称を記載した上で書くことはできますが、それ以外はアウトです。
なお、日本専門医機構認定の専門医であることは、「限定解除」の対象となるホームページであればOKのようです。
「研修」については、「限定解除」の対象となるホームページでは掲載可能ですが、「限定解除」されていなければアウトとなります。
チェック10
□ 医薬品、医療機器の販売名を記載しているか。
医薬品、医療機器の販売名は要注意です。
「医薬品等適正広告基準」により、医療関係者以外の一般人に向けて、これらの広告を行ってはいけないとされていますので、これらの名称を記載しないように注意して下さい。
以上の点は、ホームページでよく問題になる項目を挙げてみました。
まずは、この10項目をチェックしていただき、ガイドラインに適合しているかを検討しておくことが必要だと思います。
ただし、ホームページの適法性判断は、微妙な判断が要求されるケースも多く、なかなか自己診断できない部分もあります。また、規制の内容も、上記のチェック項目のみではなく、多岐にわたります。
疑問点があれば、専門家である弁護士に相談していただくのが良いと思います。
是非一度、当事務所にご相談ください。