丸橋 : 下元先生には本当に感謝してるんです。うちは神戸界隈で「歯がボロボロ」という派手な看板をたくさん出して集患してるのですが、最初、媒体の審査に引っかかってしまって。それを相談したのが下元先生との出会いでした。
下元 : あの看板、最初に見たときは衝撃でした。歯医者さんであんなに攻めた看板は見たことがなかった。「歯がボロボロ、グラグラ、重度歓迎」って…すごい挑戦をされているなと、これは絶対に通したいと思いました。
丸橋 : あの看板を保健所に通すなんて「無茶いうな」というお気持ちだったと思うのですが(笑)、下元先生は素晴らしい意見書を書いてくださって、保健所にも足を運んでくださって、最終的に、ほぼ内容を変えることなくデザインを通すことができました。
あの看板の効果はすごくて、来院患者数は10倍、年商もずっと2億円超えをキープできています。
下元 : いまや神戸界隈で丸橋先生の顔を見ない日はないですし、歯科業界における広告の先駆者として有名になられました。セミナーの講師をされたり、デンタルダイヤモンドで連載をされたり、広告学の本(※)も出版されたんですよね。
丸橋 : 色々やらせていただいています。あの看板は大きなきっかけになりました。
下元 : 私にとってもあの看板の仕事は大きな転機だったんです。弁護士として20年のキャリアの中で、転機になった仕事というのはいくつかあるんですけど、間違いなくその1つがあの看板です。おかげ様で医療広告に強くなり、歯科のお客様も増えました。
丸橋 : それにしてもあのときの意見書は気迫がすごかったです。「歯が悪くなっても歯医者に行きづらいという社会実態がある。「重度歓迎」というのは、そういう人たちに来てもらうための表現であり、ひいては医療が行き渡る、この看板にはそういう社会的意義がある」といったことを書いてくださっていて。
下元 : いま読んでみると我ながら熱量がすごいですね(笑)。保健所の方も最初は驚かれたと思うのですが、お話しているうちに「これを言いたいなら、こういう表現にしたらどうか」という感じで色々アドバイスくださるようになって。
丸橋 : 保健所の方のその反応は意外でしたか?
下元 : はい。まったく想定外でした。というのも、弁護士の普段の仕事って、検察官や裁判官、相手方の弁護士を相手に、基本的に「戦って」いるわけです。だから保健所も同じように警戒して行ったんですけど、反応が違った。ダメなものはダメとは当然言われるんですけど、味方になって一緒に考えてくれるというか。保健所の方って、きっと地域医療をよくしたいという思いが第一にあって、取り締まりをしているわけではないんですね。そういうことが分かったのも大きな発見でした。
丸橋 : 保健所に怒られるんじゃないかと思っていたあの看板をきっかけに、むしろ保健所との信頼関係を築いてくださった。その後うちにネットパトロールが来た時も、保健所の方は好意的なアドバイスをくださっていているんですよね。だから僕は本の中でも「広告を出すときは絶対に保健所にと押したほうがいいですよ」と言ってるんです。保健所は敵じゃないですし、なにしろうちの看板がOKだったんだから、大抵は大丈夫でしょうと(笑)
丸橋 : ところで「歯科医院向けの法律相談」というのは、具体的にはどんなことをされるんですか? 医療広告以外だと…。
下元 : 労務トラブル、クレーム対応など様々ですが、一番思っているのは院長先生がお困りのことを全て相談していただきたいということです。顧問弁護士というと、一般的には契約書チェックや取引関係のトラブルなどがメインだと思うんですけど、私はもっと経営者の方に寄り添う仕事がしたいんです。
以前、丸橋先生がセミナーで、歯科クリニックの売上分布の話をされてましたよね。数千万円のクリニックが最も多く、それを突き抜けた1億円のラインがあって、さらに2億円のラインがあるというあの分布、実は弁護士もとても似ているんです。
丸橋 : そうなんですか。
下元 : はい。僕の体感ですけど似ていると思います。歯医者さんと弁護士は「一国一城の主」という点も同じですし、あと僕は弟が歯科医師だということもあって、歯科医師の先生には勝手にシンパシーを感じているんです。一緒に大きくなっていきたい感覚があるんです。だから一番は歯科クリニックが大きくなっていくお手伝いをしたいと思っています。
丸橋 : 医院を大きくして頑張っている先生ほど、トラブルも起こりやすいと思うんです。分院をたくさん持たれているある先生は、「いつでも患者さんの家に行って土下座する覚悟がある」とおっしゃっていました。でも、全て自分で背負うってしんどいですよね。
患者さんと揉めて賠償問題になったなんて話もよく聞くんですけど、歯科医師って争いが苦手な人が多いと思うんです。医療の仕事ってわりと性善説でやる仕事というか、争いに対してはメンタルを鍛えづらい。
下元 : 争い、私は燃えるほうですね。
丸橋 : 下元先生は争いの現場をたくさん見られていて、踏んだ場数が違うというか、慣れてらっしゃるんですよね。そういう方に相談できるのはとても心強いことです。歯科の多くの先生は、どこまで自分で対応して、どこから弁護士さんにお願いすべきかというのもわからないと思うんです。
下元 : まるっと渡してくださるのが一番いいんです。よく「こんな相談したらアカンと思って、途中まで自分で頑張ったんですけど…」みたいなことを言われるんですけど。「ちょっとトラブルになりそう」くらいの段階から教えていただいたら順番に対応できるじゃないですか。
丸橋 : 自分で抱え込まないことが大事なわけですね。
下元 : はい。これは自分でやる。ここからは人に任せる。そうやって的確に分けられたほうが精神的にも絶対いいです。お一人で抱えるのって本当に大変ですから。あと、顧問の仕事をしていると、社長さんや院長先生から「実はスタッフが離婚で困っていて」とか「事業承継の相続の問題で」とか「もう遺言を書いた方がいいのかな」とか、そういう個人的なご相談もよくいただくんです。そういう全てをお手伝いしたいと思っています。
※丸橋伸行著「歯科広告学入門」(デンタルダイヤモンド社)。
帯のキャッチコピーは「歯科初! 患者さんが集まる「広告」のコツ、教えます。」
丸橋伸行先生
神戸市須磨区「のぶ歯科クリニック」院長。
広島大学卒業後、神戸市内のクリニックに勤務した後、2006年に開業。